オリジナルの柄やデザインを布にプリントするとき、思ったよりも仕上がり位置がずれてしまった――そんな経験はありませんか?
せっかく作ったデータも、入稿時の設定やトリミング範囲、余白の扱いを誤ると、実際のプリント位置が微妙にずれて見えてしまうことがあります。
この記事では、DTFや昇華転写プリントなどの生地プリントでズレを防ぐためのデータ作り方を、実際の制作現場の観点からわかりやすく解説します。
初めての方でも安心して入稿できるよう、具体的な手順と注意点をまとめました。
ズレが起こる主な原因を理解する
プリントのズレは、データ上のミスだけでなく、印刷工程や素材特性による影響も大きく関係します。
まずは、どんな要因でズレが生じるのかを把握しておきましょう。
生地特有の「伸縮・歪み」
布は紙と違い、熱や湿度、テンション(引っ張り)によってわずかに伸びたり縮んだりします。
特に昇華転写プリントでは、高温のプレス工程中に生地が動くことがあり、ミリ単位のズレが起こることもあります。
- ポリエステル系の薄手素材 → 熱で伸びやすい
- 厚手スエード・キャンバス → 歪みにくいが、転写時の圧力で動くことも
データのトンボ位置・塗り足し不足
トンボ(裁ち落とし線)や塗り足しを設定していないと、断裁時に意図しない位置でカットされることがあります。
たとえ0.5mmのズレでも、ボーダー柄や幾何学模様では目立ってしまうため要注意です。
配置・リピート設定ミス
Illustratorなどで柄をリピート配置する際、パターンの継ぎ目がズレていると、プリント時に段差のような違和感が出ます。
特に、複数パネルを並べて大きな柄にする場合は、左右・上下のつなぎが完全に一致しているか確認しましょう。
正確な位置で仕上げるためのデータ設定ポイント
ズレの原因を理解したら、次はデータ作成時の対策を行いましょう。
以下の設定を押さえておくと、仕上がりの精度がぐっと高まります。
1. 塗り足しは最低3mm以上を確保する
印刷や断裁の工程では、1〜2mm程度の誤差は発生することがあります。
そのため、柄や写真の背景は3mm以上の塗り足し(余白)を付けておくのが安全です。
特にボーダー柄・格子柄など、位置ズレが目立つデザインは多めに余白を取るのがおすすめです。
2. トンボと仕上がり線を明確に分ける
トンボ(トリムマーク)は印刷位置を合わせるための目印ですが、
「実際の仕上がり線」と混同されやすい点に注意しましょう。
- トンボは黒100%で作成
- 仕上がり線は別レイヤーで、0.25pt程度の細線
- 出力時にトンボが残らないよう、プリント範囲外に配置
これだけでも裁断時のズレを大幅に防ぐことができます。
3. リピート柄はピッチ(単位サイズ)を数値で管理
デザインをタイル状に並べるリピート柄では、
リピート単位を正確なピクセルまたはmmで設定することが重要です。
Illustratorの場合はアートボード単位でパターンを作り、
ピッチ(例:500mm × 500mm)を指定して整列させると、継ぎ目がずれません。
さらに、「スウォッチ登録」→「オブジェクト→パターン→作成」で
自動リピートを使えば、ズレを視覚的に確認できます。
4. 実寸サイズでのチェックを忘れずに
モニター上で完璧でも、実寸出力して確認すると比率が違って見えることがあります。
最終入稿前には、A4やA3サイズで実寸プリント確認を行い、文字や柄の位置を実際の大きさでチェックしましょう。
入稿前に行いたい最終チェックリスト
最後に、実際のプリント前に確認しておきたいチェックポイントをまとめます。
このステップを踏むことで、ほとんどのズレトラブルは未然に防げます。
✅ チェック項目一覧
- カラーモードがCMYKになっているか
→ RGBのままだと、印刷時に色ズレが発生することがあります。 - 塗り足しは上下左右3mm以上あるか
- トンボ・仕上がり線が明確に分かれているか
- リピートピッチが正確で、継ぎ目がずれていないか
- 文字や重要モチーフが断裁ラインに近すぎないか
- 画像解像度が150〜300dpiあるか(低解像度はぼけの原因)
- 実寸出力で最終確認を行ったか
これらを確認した上で入稿すれば、ズレやカット位置のミスをほぼ防ぐことができます。
正確なデータづくりが“仕上がり品質”を決める
生地プリントの仕上がりは、プリンターの精度や転写技術だけでなく、入稿データの作り方で大きく変わります。
特に柄合わせや端の処理など、細かな配慮が必要な部分こそ、最初の段階でしっかり設計しておくことが重要です。ズレのない高品質なプリントデータを仕上げていきましょう。
























